第22章 呪い合い、殺し合い、
なずなが逡巡している間にも高羽は呪霊を眺めており、何か閃いたようにこちらに目を向けた。
「あの呪霊はああして這ってるだけ?ならワンタンメーン!と一気に倒せるんじゃないか?」
「ワ、ワンタン、ですか?……でも、そう簡単にはいかなくて……」
高羽のテンションの高さにオロオロとしながらも懸念していることを伝えると、高羽は肩をすくめた。
「なずな嬢なずな嬢、今のはボケだ、ツッコミを入れてくれていいんだぞ」
「ご、ごめんなさい……」
「なぁに謝るほどのことじゃないさ!追々慣れてくれればいい。ところで『簡単にはいかない』って?」
こ、これはボケ?
ツッコミが必要なのかな……?
だが漫才などやったことのないなずなにはここで気の利いた合いの手を入れることなどできない。
「え、えっと、今はあんなですけど、近づくと長いトゲがたくさん生えてきて攻撃を寄せ付けないんです」
「ほほう、まさにウニだな!ナマコからトゲが生えてムラサキウニになるようなものか。トゲトゲのムラサキウニをどうやって割るか知ってるかい?」
「えっと、ひっくり返して下から……」
「そう!俺がさっき考えた必殺技であれをひっくり返すからなずな嬢はその切れ味バツグンの刀で割ってくれ」
「そんなことできるんですか!?」
「任せろ!あんなにデカいんだ、きっと中には旨そうな雲丹が詰まってるぞ」
「……絶対に食べちゃダメです」
「フッ、掴んできたじゃないか。前フリは完璧だな、なずな嬢」
「フリじゃないです!」
うんうんと何度も頷く高羽に思わず語気が強くなる。
呪霊は食べ物ではない。
むしろ人体にとっては毒物だ。
しかもあんな毒ガスを噴き出す呪霊を食べるなんてとんでもない。
高羽がどこまで本気なのか、なずなには推し量ることもできなかったが、食べるうんぬんはきっとボケなのだと自分に言い聞かせる。