第22章 呪い合い、殺し合い、
「呪霊というのは、人の呪力が外に漏れ出て澱のように積み重なって動物や虫、お化けみたいな形になったモノです。最初は弱いことが多いんですけど、呪力を増して強くなってくると人を襲ったりします。あ、呪力っているのは人の負の感情から生み出されて……」
本当に何も知らない人に一から説明するのは意外に大変かもしれない。
なずなはどこまで説明したものか悩みながら説明し終えると、高羽は力強く頷いた。
「つまり俺が全人類を笑顔にさせれば呪霊は生まれなくなる、と」
「えぇ……」
そんな単純な話ではない……と思う。
というか全人類を笑顔に、なんてとても1人ではできないのでは……?
本当に分かってるのかな、この人……
あまりにも飛躍しすぎな超理論になずなはついていけずにただ呆然とするばかり。
「ではまずなずな嬢を笑顔にさせなくてはな!」
そんななずなの顔を見てそう宣言した高羽は地上にいる呪霊を指差した。
「あれをやっつけるんだろ?協力するぜ」
そうして2人は地上をゆっくりと這っている呪霊を確認する。
「高羽さんは呪力とか術式って使えますか?」
「ムムム?」
大仰に首を傾げる高羽の頭上に疑問符がたくさん浮かんでいるように見え、なずなは表情が引きつってしまう。
やっぱり……
さっき呪霊を知ったばかりなのだから仕方ない。
そうすると呪霊を祓えるのは自分だけ。
先程呪霊にやられた傷は治ったし、身体の痺れもだいぶ取れてきているので、戦闘には支障ない。
でもせっかく協力を申し出てくれたのに何を協力してもらえばいいんだろう?