第22章 呪い合い、殺し合い、
伏黒は頭を切り替え、目の前で嘘泣きしている女に問いかけた。
「日車という術師を知っているか?」
「男って女は殴ればなんでも言うこと聞くと思ってるよね」
「答えろ」
「はい、すみません」
苛立ちの出ている伏黒の声に女は思わずその場に正座する。
そして人差し指を立てて自分の頬に当てた。
「日車ってアイツでしょお?100点取ってる」
「どこにいるか分かるか?」
「……ふーん成程、そういうことね。教えてあげてといいけど、私のお願いも聞いて欲しいなぁ」
「……言ってみろ」
すると女はわざとらしく耳に手を当てる。
「言ってくだ……?教えてくだ……?」
「言え」
はい、としおらしく返事する女。
もうこれでふざけることはない、と思ったが伏黒のその予想は甘かった。
今度は胸の前に両手を当て、期待の眼差しで伏黒を見上げてくる。
「私の“騎士(ナイト)”になって?」
「分かった、それでいい」
にべもなく即答した伏黒に女は肩をすくめる。
「……私ってそんなにイジリ代ない?」
その態度に伏黒が眉を寄せた。
ふざけている暇などない。
一刻も早く日車を見つけてルールを追加させ、逸れた2人も捜さなければならないし、合流した後もやることは山積みだ。
「時間がないんだ。早くしろ、前歩け」
呪具で前を示すとあからさまに不満を露わにした。
「分かってんの!?騎士って命懸けで私を守んのよ!?」
「……」
なんでこんな奴が死滅回游に参加してんだよ。
襲撃してきた時の動きは非術師ではなかったし、泳者であることも間違いない。
にもかかわらずこの態度。
死滅回游が殺し合いの儀式だということを分かっているのかも怪しい。
だが、こちらを油断させるための芝居という線も捨てず、女をきつく睨む。
「オマエの言ってることが本当ならな。嘘だったら……分かるな?」
俺は虎杖や渡辺とは違う。
自分で100点獲ってもいいんだ。
殺気を孕んだ視線を受け、ふざけた態度を取っていた女もさすがに顔を歪めた。
「オマエはやめて、麗美って呼んで」