第22章 呪い合い、殺し合い、
別の場所では―……
「いたぁい、いたいよぉ」
伏黒が睨む先で女が頬を押さえて泣き崩れていた。
長い髪をいくつかのお団子が連なるようにまとめたドレス姿の女。
上空から落ちてきた伏黒をいきなり襲撃してきたのだが、弱かったのであっさり返り討ちにしたのだ。
「どぉしてこんなことするのぉ?」
「そっちが襲ってきたんだろうが」
伏黒は警戒を緩めずに呪具を握り込む。
結界に入った直後、示し合わせたかのように襲撃を受けた。
おそらく待ち伏せされていたのだ。
死滅回游が始まって10日以上経過しており、回游の参加者がある程度増えているのは予想できていたし、待ち伏せされる可能性もあるとは考えていた。
だが、想定外が2つ。
1つは結界侵入早々上空に放り出されたこと。
そしてもう1つは……
同時に結界に入ったはずの2人がどこにもいないのだ。
周囲にそれらしき呪力も感じられない。
クソッ、想定外の逸れ方をした。
内心悪態をついた伏黒の傍らへ偵察に出していた鵺が降りてくる。
「どうだ?」
首を横に振る鵺を見て、少しの落胆とやはりという得心。
鵺でも見つけられない。
死滅回游の結界は渋谷よりずっと広い。
多分2km以上離れてるな……
虎杖と渡辺が一緒にいればまだいいが、そういう期待はしない方がいいだろう。
でも目指す場所は全員決まってる。
唯一なずなだけが非常に心配だが、今のこの状況ではどうすることもできない。