第22章 呪い合い、殺し合い、
直後にビルの影からプシューと空気の噴射音のような音がする。
「何……?」
なずなが警戒を強めて音のした方を注視すると……
大きくて丸い何かが出てきた。
気配からして呪霊だ。
なずなには気づいていないのか、倒れた人に向かってズズズと這い寄り、上に覆い被さるとその場でモゾモゾと蠢いている。
その間もずっと噴射音は続いていた。
おそらくあの呪霊が毒ガスを発生させている。
このまま放っておけば、この一帯、下手すれば結界中に毒ガスが充満しかねない。
早く祓わないと……!
でもあのガスをどうにかしないと近づけない。
どうすれば……
なずなが考え始めた矢先、呪霊のすぐ隣にポンッと小さな式神が現れた。
コガネだ……!
「あの呪霊、泳者なの……?」
「そうだぞ。アイツは泳者だ」
「!」
なずなは驚いて傍らにいるコガネを見る。
だったらまるで話は変わってくる。
あの呪霊はたまたまここにいたのではなく、この転送地点に待ち伏せしていたのだ。
結界に入ったこのタイミングで襲撃を受けたのも初めから待ち伏せされていたから。
もし他の転送地点にも同じように先に入っていた泳者が待ち伏せしていたら?
この儀式が始まって今日で12日、コガネは聞けば教えてくれる様子だったし、転送地点に気づいた術師がいても全然おかしくない。
別の地点に転送された2人が不意打ちされていたら……
「コガネ、伏黒くんと虎杖くんの位置情報出せる?できれば2人に憑いてるコガネに連絡とか」
「それはルール追加してくれないとできねーなぁ」
「じゃあ情報だけでいいから!」
「ほいっ」
瞬時にコガネの腹部に情報が表示される。
伏黒 恵
得点:0
変更:00回
滞留結界:東京第1
虎杖 悠仁
得点:0
変更:00回
滞留結界:東京第1
2人を表すアイコンはどちらも生きていることを示している。
とりあえず良かった。