第22章 呪い合い、殺し合い、
その直後、不意に空気が揺らいだ。
ぶわりと突風が吹いて生ぬるい空気に変わり、突如感じる目の異常。
目に沁みる……!
毒ガス!?
無論、それは何者かの襲撃を意味している。
狙っていたかのようなタイミングに何故とも思ったが、今はそんなことを考えている場合ではない。
吸い込まないよう息を止めて近くの建物の屋根に逃げる。
幸い毒ガスは空気より重いらしく、ここなら息をしても苦しくなかった。
本当はすぐにでも目を洗いたかったが、そうも言っていられない。
涙で滲む視界で懸命に毒ガスの発生源を探す。
ガス自体は無色透明だが、上から見るとガスが流れてきている場所は街路樹が枯れているのが分かる。
それにガスが呪力を帯びている。
ガスに指向性がないと仮定すると街路樹が枯死している範囲の中心部が一番怪しい。
中心……中心部……
建物の上を移動しながら隅々まで目を走らせていくと、異様な光景が目に飛び込んできた。
街路樹から細く煙が立っている。
葉は全て落ちて木全体が黒く焦げたような……
周辺の街路樹も同じような状態だ。
あそこは他より毒性が強いのか……
「……っ」
街路樹の更に下に視線を移したなずなは息を呑んだ。
……人が倒れている。
ピクリとも動かず、髪は抜け落ち皮膚も赤く爛れ、衣服にも溶けている箇所が。
ひと目で手遅れだと分かる。
きっと毒にやられてしまったのだ。
とその時、危険を知らせるかのように鬼切が脈打った。