第6章 真昼の逃避行
「帰るぞ、真依」
「なっ、そんな……!」
現れた東堂は無傷。悠長に上着を拾い上げている。
驚愕した野薔薇の拘束が緩み、真依もそこから抜け出てしまった。
「伏黒となずなは?」
「大丈夫だ。パンダ達がついてる」
後退った野薔薇に真希が耳打ちした。
「楽しんでるようだな」
「冗談じゃない、私はこれからなんですけど?」
リボルバーを構えようとする真依を東堂が制止する。
「ダメだ。オマエと違って俺にはまだ東京に大事な用があるんだよ」
むしろこちらの方が本命だ。ずっと前から楽しみにしていたビッグイベント。
「高田ちゃんの、個別握手会がな!」
1人で盛り上がる東堂に女子3人は冷ややかだ。
「乗り換えミスってもし会場にたどり着けなかったら、俺は何しでかすか分からんぞ。ついてこい、真依」
「もうっ、勝手な人!」
でも本当にとんでもないことをしでかす危険性がある。
「アンタ達、交流会はこんなもんじゃすまないわよ?」
「何勝った感出してんだ!制服置いてけ、コラーッ!!」
真依の捨て台詞に噛みつく野薔薇を今度は真希が止める。
「やめとけ。ここじゃ勝っても負けても貧乏くじだ。交流会でボコボコにすんぞ」