第21章 ネクストステージ
自分が伏黒に引き寄せられる、あるいは伏黒が自分に引き寄せられる危険はあったが、もしそうなったら一旦術式を解除すれば振り出しに戻せる。
伏黒にぶつかる瓦礫を眺めている綺羅羅は背後に接近した影に気づかない。
呪力を察知して振り向いた時にはガッチリと渾に捕まえられていた。
「なっ、にいぃいい!?」
なんで!?どこから!?
いやそうか……!
あの子、まだ一度もワンコの式神を解除してなかったんだ!!
同じ星同士どっちが引き寄せられるかも見破られた!?
自分と式神の間に壁を挟んで引き寄せられる式神を壁に引っ掛けておけば離しておける。
そして私が線上に立ったらワンコを放つ。
最初からこれを狙ってたんだ!
「くっ……!」
このままじゃ自分が捕まる。
星間飛行、解除……!
しかし既に遅かった。
術式解除と同時に綺羅羅は伏黒に組み伏せられる。
「話、聞いてください」
渾を解除し、敵意がないことを示す。
「……君、本当に今の狙ったの?ワンコと君、どっちが引っ張られるかなんて分かんないじゃん」
「そこは賭けでしたが今分かりました。“呪力出力が高い方”に引っ張られますよね?はじめは俺が玉犬に引っ張られたのに、綺羅羅さんの攻撃を防御しようと呪力で強化した今回、結果は逆になった」
……その通りだ。
言い当てられた綺羅羅は舌打ちして伏黒を睨み上げた。
「君、1年生?ホンット可愛げな……」
綺羅羅を押さえつえていた重さが消える。
憮然と起き上がると伏黒が両手を床につけて深々と頭を下げていた。
「お願いします。時間がありません。話を聞いてください」
「……分かったよ」
ここまで追い込まれた後にそこまで言われては綺羅羅も承諾する他なかった。
「いやー、いいとこ無しだな、俺達」
「はい……油断しました……」
車とくっついて動くに動けなかったパンダは肩をすくめ、なずなは肩を落としていた。