第21章 ネクストステージ
「!、伏黒くん!!」
なんで!?
それには呪力を篭めていないはず……!
飛ばせるはずのない瓦礫が飛んでいき、驚愕したなずなはわずかに足を止め、振り返ってしまう。
一瞬の、しかし決定的な隙。
気づいた時には既に遅く、綺羅羅の手がなずなの手に触れていた。
「っ!」
直後に手の甲に現れたのは「★Imai」の文字。
その星が目に入ったのとほぼ同時になずなはパンダの方に飛ばされた。
5つの星を定められた順番通りに触れていかなければ近づけないという伏黒の仮説は正しい。
綺羅羅の術式「星間飛行(ラヴランデヴー)」は南十字座をモチーフとし、5つの星を対象の呪力に割り振る。
星が別の星に接近するには定められた順序を守らねばならず、同じ星同士の対象は一方が一方に引き寄せられる。
その順序とは星座の奥行き。
平面的に見える星座にも当然奥行きがあり、地球からの距離はそれぞれ異なる。
地球から近い順にガクルックス、ギナン、ミモザ、アクルックス、イマイ。
綺羅羅によりアクルックスの星をつけられた伏黒がガクルックスの星がついた扉に到達するには、ミモザ→ギナンを経由しなければならない。
だが、星をつけられる呪力はもうないという予測は外れていた。
「君、凄いじゃん。マジで私の術式のこと分かってるんだ。でも物分かりが良すぎてもう物は飛ばせないって決めつけてたんじゃない?」
綺羅羅は星間飛行の術師。
どの呪力にどんな星をつけるか選べるし、一度つけた星を外して別の星をつけることも自由自在だ。
瓦礫に綺羅羅自身の呪力を篭め、その上で元々ついていたギナンを外し、アクルックスをつけて伏黒に飛ばした。