第21章 ネクストステージ
だがここは何としても信じてもらわなければならない。
争っても何の意味もないのだからとなずなが訴え始める。
「き、綺羅羅先輩、五条先生が封印されたのは本当です!」
「何の根拠もないのにアンタ達の言葉を信じろって?」
「五条先生が封印されてないのなら、東京中に呪霊が溢れるなんて起こらない、呪術テロだって五条先生がいればここまで大きくはならなかったと思いませんか?」
「……」
綺羅羅は口を引き結んで眉を寄せた。
確かにそれは一理ある。
でもだからこそ信じられないのだ。
東京都民が避難を余儀なくされる程に溢れた呪霊も未曾有の呪術テロも1人でなんとかできてしまう五条が封印された?
そんなの封印を目論んだ者が返り討ちにされるに決まってる。
「渡辺、少し下がれ!」
伏黒はそう言うと同時に兎の影絵を作り、大量の脱兎を出した。
この人は秤さんに一番近い人だ。
説得できれば秤さんとの交渉が楽に進む……!
「!」
次々と出てくる脱兎の背中に見慣れない文字が刻まれていることに気づく。
すべて同じ文字だ。
―★Acrux―
アクルックス!?
綺羅羅相手には初めて見せる式神にもかかわらず、全ての脱兎にいつの間にか刻まれている。
これが綺羅羅さんの術式?
モニタールームのドアをよく見ると、脱兎とは異なる★Gacruxとある。
ガクルックス……!
それが何を意味するのか、伏黒には心当たりがあった。
屋上に張り出したロフト部分に移動すると当然ながら脱兎も伏黒に引き寄せられてくる。