第21章 ネクストステージ
膠着状態になったならちょうどいい……!
「綺羅羅さん!俺達は今、正確には高専側ではありません。東京が現状どうなっているか、知ってますよね!?」
伏黒は綺羅羅に動きがないことを注視しつつ、交渉を持ち掛けた。
「各地で発生している結界も無関係じゃない。未曾有のテロがあったんです。秤さんの協力が必要なんです!」
「そっちが先に私達をハブったんじゃん、自業自得でしょ」
口を尖らせ、睨みつけてくる綺羅羅は完全にこちらを高専側だと決めつけている。
おそらくどんなに言っても埒が開かないだろうと予想はついたため、伏黒は質問を変えた。
「……上と何があったんですか?」
呪術規定を破っているとはいえ、呪詛師でもないのにここまで高専を嫌悪する理由が伏黒には分からなかったのだ。
これには綺羅羅ではなくパンダが答える。
「保守派と揉めたんだ。そんで保守派の“保守”ってのは何も規定に対してのスタンスの話だけじゃない」
「『呪術はこうあるべき』みたいな思想があんだよ。野薔薇の術式なんかが分かりやすい。保守派好みの呪術らしい呪術だ」
術式は千差万別、古くからあるものもあれば、新しく生まれるものもある。
「昔流行った『呪いのビデオ』とかさ、時代が進めば呪術だってニューテクと絡むことがある。それが術式にまで及ぶと保守派はうるせぇのよ」
「金ちゃんの術式はその典型だからね、上のバカ共そんなんだから負けんのよ」
綺羅羅はそんな古臭い上層部が大嫌いだ。
そしてもう一つ、パンダ達が秤達に協力を持ちかける必要がない理由があることも綺羅羅の疑念を高めている。
「でもさ、アンタらは五条悟にいくらでもケツ拭いてもらえるじゃん。私らに頼る意味が分かんない……ってことは頼ってきたのは嘘で、他に目的があるって考えるのが普通じゃない?」
「五条先生は封印されました。だから負けたんです」
伏黒の返答にキョトンとする綺羅羅。
「コイツ、何言ってんだ?」と言わんばかりの表情だ。
あぁー、信じてねぇなぁ!!
……まぁ、気持ちは分かるけど。
綺羅羅の反応にため息を吐いたのはパンダだった。