第21章 ネクストステージ
「この社会は大きく張れない奴と引き際を知らない奴から振り落とされていく。ギャンブルをしていない人間なんていないのさ。奴らが憎んでいるのは賭け事ではなく、“敗北”と“破滅”だ」
「できるだけ穏やかに暮らしたい人もいるんじゃ……?」
「んな奴知らないね」
虎杖は疑問符を浮かべながら1年の面々で考えてみる。
渡辺は確実に穏やかに暮らしたい派だと思う。
伏黒もギャンブルは嫌いだろう。
釘崎は……あんまり抵抗なさそう。
「俺は“熱”を愛している。熱は“賭け”で賭けは“人生”だ。そして“愛”とは“支配”だ。俺はゆくゆく賭け試合(ファイトクラブ)でこの国の“熱”を支配したい」
それが秤の野望。
「呪霊の存在が公表され、総監部もロクに機能していない今が事業拡大のチャンスだ。あらゆる障害を潰し、来たる呪術規定の改定に乗じて賭け試合の存在を公に認めさせる」
今の混沌とした状況は秤にとっては好都合、逃す手はなかった。
「兎にも角にも優秀な駒がいる、虎杖、俺の“熱”に浮かされてみないか?」
これは秤の協力を得るチャンスかもしれない。
自分が賭け試合に協力する代わりに死滅回游平定への協力を頼めば……!
伏黒から言われた高専の話をする順番にも留意して虎杖が切り出す。
「胴元、相談が……」
その時、机に置いてあった秤のスマホが鳴り出した。
5コール程で止まったそれはある電話番号からの着信。