第21章 ネクストステージ
ぶつかる手前で鵺を解いた伏黒は慣性で飛んできたなずなを受け止め、更にその後ろにいた渾が支えたような形になった。
「ご、ごめんねっ、怪我してない?」
「ああ、オマエこそ大丈夫だったか?」
伏黒の腕にすっぽり収まったなずなが勢いよく顔を上げて慌てて謝る。
伏黒はすぐ立ち上がって、なずなに手を貸した。
お互い少し顔が赤い。
照れ臭くなった空気を振り払うように頭を振って、なずなは綺羅羅を見据える。
「あの人が虎杖くんを案内してた女の人で……」
「あれがもう1人の3年の綺羅羅さんだ」
「えっ!?」
でもパンダ先輩は確かに男だと言っていたはず……
伏黒はなずなにしか聞こえないよう声を落として伝えたが、彼女が驚愕のあまり声を上げてしまったので無駄に近かった。
ただ、なずなが勘違いするのも無理はない。
伏黒もパンダから名前を聞くまでは別人だと思っていた。
背が高いといっても髪型もメイクも女性的、服装も女性のもの、極めつけは胸の膨らみ。
この見た目だけで男性だとはとても判断できない。
事前に名前だけではなく、もっとパンダから綺羅羅の容姿を聞いておくべきだったのだ。
「綺羅羅さんの術式は特定の対象に近づけないのと、別の対象から離れられない効果もあるみたいだ」
伏黒が判明した範囲の術式効果を伝えながら、なずなとの間にはどちらの力も働いていないことを確認する。
なずなの頭上には自分やパンダのような明かりがないことから、まだ綺羅羅の術式を受けていないのだろう。
綺羅羅の方は単純に相手をしなければならない人数が増えてどう動くべきか判断に迷ったようだ。
一歩では詰められない距離を置き、事態が膠着した。