第21章 ネクストステージ
パンダの腹に重い拳を叩き込んだフリをして、パンダもそれに合わせて派手に吹き飛ばられて倒れた。
腹に手を当ててうずくまり、大袈裟に立てないアピールをする。
「ぐぁっ、なんてパンチだ!動けん、これは動物愛護団体が黙ってないぞ!」
……すごくわざとらしい。
あまりに演技が下手なので、実況や観客に怪しまれないかヒヤヒヤしたが、それは杞憂だったようだ。
「勝者、虎杖ィーッ!!」
虎杖が右手の拳を掲げると、会場から拍手が湧き起こった。
湧く試合会場の観客スペースの隅でリーゼントの男がある電話を受けていた。
『トーナメントが終わったら虎杖を屋上へ上げろ』
「は?」
『どーせ勝ち残る』
電話口の相手はこの賭け試合を仕切る胴元だ。
『しかもアイツ、上階の客を魅せるために意識して立体で動いてた。いい脚本が書けそうだ。いつも言ってんだろ』
「熱は熱いうちに……だ」
そう伝えたのは別室でパンダと虎杖の試合を観戦していた呪術高専3年の秤 金次。
「それ、馬鹿っぽいからやめな?」
隣で秤をたしなめたのは同じく呪術高専3年の星 綺羅羅。
『はい。でもどうします?もう1人のガキの方は……』
「それは引き続き警戒しろ。後で警備に綺羅羅も出す」
「え〜?」
虎杖と共にここへ来て、賭け試合に出せと言ってきた黒髪の少年。
食えない奴だと追い返したため、何かアクションを起こしてくるかと思っていたが、今のところ不審な動きはない。
「いい感じにザワつくぜ。こんなにザワつくのは元カノがリボ払いしまくってた時以来だ」
「元カノの話はやめて」