第6章 真昼の逃避行
不利な体格差、しかもこんな平坦な場所では上も取れない。
だったら下だ。
攻撃を低く集める。
玉犬も加わって積極的に足を狙う。
上からくる東堂の鋭い打撃、下からの蹴りをギリギリでかわす。
鍛えた肉体とそれに上乗せされた呪力。
掠るだけでも危険だと肌で感じる。
さすが一級呪術師、レベルが全然違う。
なずながなんとか避けられているのはキャシィとの特訓の成果と思いたいが、相手が様子見の姿勢なのが大きい。
この人、全然本気を出してない……!
かといって見くびられているわけでもないことは分かる。
甘く見られているのなら、まだ隙をつけるが、そんな隙は全くなかった。
なずなと玉犬の攻撃はすべて捌かれ、掠りもしない。
「伏黒よりよほど覚悟が決まってるな……だが軽すぎる!」
東堂はなずなの斬撃を容易く避け、鬼切を持った右手を掴む。
しまった!
捕まったと思った時にはもう両足が浮いていた。
ぐんと右腕を引っ張られ、なす術もなく投げ飛ばされる。
「きゃあああっ!」
放り出された先を見ると地面が遥か下に見える。
一体何階分くらいの高さから落ちるのだろうか。
「渡辺!!」
鵺を出そうとした伏黒のすぐ真横に東堂が迫る。
「よそ見してんじゃねぇぞ!」