第6章 真昼の逃避行
東堂の強烈な攻撃で、伏黒は舞台の上まで飛ばされてしまった。
急いで破壊されていない柱を伝っていく。
上に出ると井底不知に拘束された東堂が見えた。
今なら、いける。
「ハッ、こっちはやる気があるようだな!」
「!」
井底不知の舌を引きちぎって伸びてきた東堂の脚を身をひねって避け、後退して距離を取る。
絶好のチャンスを逃してしまった。
「バッ、いきなり刀で斬りつける奴があるか!」
いつの間にかなずなの手にある鬼切を見て、伏黒は思わず咎め立ててしまう。
「で、でも、あの人ものすごく強いよ!?」
正直、自分達が本気でかかっても勝てる気がしない。
殺気は薄いが、闘気が凄まじい。
性質は異なるが、少年院で宿儺と対峙したときの感覚に似ている。
対する東堂は余裕の表情だ。
「いいだろう、2人まとめてかかってこい!」
なずなは鬼切を構えて東堂を見据える。
私も伏黒くんもあの人に突撃されたら絶対止められない。
攻勢に転じる隙を与えずにこちらの攻撃を畳みかけなければ。
本当は2人がかりで仕掛けたいけれど、伏黒くんは頭を怪我している。これ以上近接戦闘をするのは危ない。
井底不知はまだ破壊されていないから、拘束できる可能性はある。
「伏黒くん、私を式神で援護して」
「無茶だ。オイ待て!」
なずなは制止を無視して東堂に斬りかかっていった。
「クソ……玉犬!」
怪我のせいでふらつく自分がいっても渡辺の邪魔をするだけだ。
伏黒が歯噛みして玉犬を向かわせる。