第21章 ネクストステージ
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「ごめんね、玉犬のこと、たまちゃんって言っちゃった。本当の名前は玉犬なのにね」
立体駐車場が見える高台の木立に隠れたなずなはそう謝って隣に控える玉犬の頭を撫でた。
いくら咄嗟に口から飛び出した名前とはいえ、自分でも“たま”はどうかと思う。
せめて“ポチ”にしておけばよかった。
隣に座ってこちらを見上げる玉犬の凛々しい顔を見て考える。
……でも、
玉犬、ポチって顔でもないよね……
気を取り直して立体駐車場に目を移す。
あちこち塗装が剥げており、人の気配はまばら。
閉鎖されているから当然だが、車の出入りはない。
ただ、全く人がいないという訳でもなく、駐車場の周りを歩いていたり、各階にも数人いそうな気配だ。
肝心の入口は……
たった今、虎杖と伏黒が入っていく自動車用の出入口ゲートとそのすぐ脇に人が出入りできそうなドアがある。
だがあそこには人がいる。夜になっても無人にならないのであれば潜入は難しい。
きっとどこかに非常口がある、はず……
「え、あれ……!?」
なずなが視線を走らせていると、見覚えのあるシルエットが目に入ってきた。
しかし、その者はここにはいないはずで……
いやでも見間違いなんてしようがないシルエットに目を擦ってもう一度確かめて……と思ったらすぐドアの向こうに消えてしまった。
「……あそこが非常口かな」
出入口ゲートのちょうど反対側にシルエットが入ったドアがある。
中まで確認はできなかったが、少なくとも表側よりは警備は手薄そうだ。
「あ、2人とも出てきた」
ちょうどその時交渉が終わったのか、虎杖と伏黒もゲートから出てきていた。