第21章 ネクストステージ
もちろん真っ赤な嘘であるが、大男が息を呑んだのでそのまま続ける。
「1ヶ月くらい前だ。威勢だけのクズがいたろ」
「……ひと月前、コンドーが消えた」
スーツの男が大男に耳打ちし、何やらスマホで連絡を取り始めた。
相手はおそらくもっと目上の者、胴元である秤ということも考えられる。
その間も伏黒は続ける。
「その穴を埋めてやる。なんなら胴元の前でアンタを転がしてみせようか?」
そこまで聞いてやっと虎杖にも伏黒の意図が理解できた。
いきなり秤に会わせてくれと言っても警戒されて当然。
秤の名前を出すのも、なぜ名前を知っているのかと怪しまれる。下手すると高専関係者の疑いまでかけられ、逃げられるかもしれない。
逆に賭け試合に出場できれば警戒されずに中に入れるという訳だ。
自分が話すとボロが出る、そう思って虎杖はお口チャックした。
「そこまでだ」
スーツの男が話し終わったようだ。
「ボスからお許しが出た。今日のシード枠にソイツを当てる」
男が虎杖を指差す。
「ただし、出るのはソッチだ」
非術師の観客がいる賭け試合なら格闘戦主体のはず……
虎杖の得意分野だ。
好都合だというのはおくびにも出さず、伏黒は渋る姿勢を見せる。
「駄目だ、俺が出る」
「ボスはテメェが食わねぇとよ。嫌ならこの話はナシだ」
まるでどこからか見ているような言い草。
それを裏付けるように2人の頭上には監視カメラがある。
下手な行動は取らない方が無難そうだ。
「……分かった、それでいい」
試合は夜に行われるということで、虎杖達は外に追い出された。