第6章 真昼の逃避行
「なずな!?アンタ、何を……!」
野薔薇が音のした方を見ると、真依がリボルバーを構えている。
「手を出さない方が身のためよ?東堂先輩、女子にも容赦ないから」
だからって伏黒がやられているのをただ見てるだけなんてできない、でも相手は拳銃を持っている。
野薔薇がその場から離れられないでいると、真依に背後から抱きすくめられた。
「あーあ、伏黒君も可哀想。二級術師として入学した天才も、一級の東堂先輩相手じゃ、ただの1年生だもの。後で慰めてあげようっと」
クソ、足止めかよ。
振り切って逃げようにも拳銃相手では下手に距離を取れない。
考えろ。
横目でなずなが起きたのは確認できた。
だったら、伏黒の方にはなずなを加勢させる。
コイツの銃口は向けさせない。
「似てるって思ったけど、全然だわ。真希さんの方が百倍美人。……寝不足か?毛穴開いてんぞ?」
「口の聞き方、教えてあげる」
苛立った真依は野薔薇の腹にリボルバーを突きつけた。
……今の、銃声?
私、撃たれたの?
なずなは冷や汗をかきながら起き上がった。
衝撃を受けた脇腹を触るが、傷はないし血も出ていない。
呪力をぶつけられただけか。
「薄っぺらいんだよ、身体も、女の好みも!!」
東堂の雄叫びにハッと顔を上げた先、伏黒がジャーマンスープレックスを食らって、頭から叩きつけられたのが見えた。
なんとか追撃はかわしたものの、東堂のスピードとパワーに防戦一方、どんどん追い詰められている。
助けないと……!
少年院でやった時のように鬼切を呼ぶ。
なずなの予想通り、グラウンドに置いてきた鬼切はすぐ手元に現れた。
あの巨体で信じられないスピードだが、考えている暇はない。
動きを鈍らせるなら、狙うのは足。
人を傷つけることになるかもしれないが、これ以外思い浮かばなかった。