第21章 ネクストステージ
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小さなラウンジには自販機と申し訳程度のベンチが設置されており、他に人はいない。
ベンチに腰掛けた2人の間には恋人にしては若干の距離があり、まだその距離を詰めるにはお互い照れくさいような……そんな間を置いて伏黒がポツリと切り出した。
「……本当はオマエにも死滅回游には参加してほしくない」
―死滅回游は未曾有の呪術テロで儀式平定のために術師を駆り出さなければならない―
それは理解している。
だが……
これは泳者同士の殺し合いだ。
これまで彼女がどれほど人を殺すことに悩んできたか……
すぐ近くで見てきたからこそ、巻き込みたくないと考えてしまう。
巻き込めばまた思い悩む場面が必ず出てくる。苦しませてしまう。
巻き込みたくない、と正直に吐露すると、無意識のうちに握りしめていた拳に小さな手が重ねられた。
「私は巻き込まれるなんて思ってないよ。私も津美紀さんを助けたいし、伏黒くんのことも助けたい、これは私の意思だから」
そして真っ直ぐ目が合う。
「……本当のことを言うと、私も同じ気持ちで伏黒くんに回游に参加してほしくない。いざという時にきっとまた伏黒くんは自分を犠牲にしてしまうから」
“また”というのが渋谷での出来事を言っているのだとすぐに分かった。
特級呪霊や呪詛師との連戦、皆が散り散りになり状況も分からなくなっていく中、疲弊し、追い詰められ、せめて彼女だけは生き延びられるようにと魔虚羅調伏の儀式に踏み切った。
「伏黒くんに自分の命を軽んじてほしくない、もっと生きたいって思ってほしい……私は大丈夫、もう迷わないって決めたから。それに私の術式は回游に向いてると思う」
鬼切を持てば気を失っていても発動する身体強化と治癒。
鬼切もそれ自体の呪いの効果でなずなの手元を離れることはない。