第21章 ネクストステージ
―少し話したいことがある―
伏黒からそうメールを受け取り、話したいことって?と聞き返したら、直接話したいから部屋に迎えに行くと返答が来た。
それを承諾してソワソワと待っていると、すぐにドアをノックする音がした。
「渡辺、いいか?」
「伏黒くん、どうしたの……?」
「鬼切、返そうと思って」
あ、そうだった、隠してもらってたんだ。
鬼切を受け取る時に少し手が触れそうになってどぎまぎする。
「あ、ごめんね、ずっと持たせてて……ありがとう」
「あと、少し話せるか?」
「うん、大丈夫。えっと、こんなところじゃなんだよね、中入って?」
ここでは落ち着いて話ができないかもと思ってドアを大きく開く。
部屋に備え付けのものだけど、お茶もあったからそれを出そう。
伏黒くんと2人でお話……
そう考えるだけでトクンと胸が高鳴る。
しかし、伏黒はなぜか部屋の前に立ち止まったまま、微動だにしない。
そして少し頬を赤くしながら眉をひそめ、口を尖らせた。
「あのな、男を簡単に部屋に入れるな。それもこんな時間に……いろいろ期待しちまうだろうが」
その言葉の意図をすぐには理解できず、今度はなずなが固まってしまう。
いろいろ期待……?
えっと、好きな人と部屋に……2人きりで部屋にいて……
……!!
そ、それは、ハ、ハリウッド映画のベッドシーン、みたいな……?
「……へっ!?あ、のっ……わ、私、そんなつもりじゃなくて……!」
途端に顔が熱くなり、思わず開いたドアをまた狭めてその後ろに身を隠してしまう。
ま、待って……!
これじゃあ私が伏黒くんを拒絶してるみたいな……
そ、そんなんじゃないんだけど!
で、でで、でも!
お、お付き合いし始めて1週間くらいだし、
まだ、その、デートとかにも行ってないのに、そんな……!
い、いろいろ順番とかあるんじゃないかな!?
バクバクと鳴り出した心臓、ドアノブを掴んでいる手もどんどん汗で湿ってくる。
グルグルと頭の中が大混乱を来たす中、伏黒の落ち着いた声で出された提案になずなは大きく頷いた。
「ラウンジで話そう」
「う、うんっ……あの、虎杖くんは大丈夫?」
「今、風呂入ってる」