第21章 ネクストステージ
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その日の夜―……
「渡辺、いいか?」
伏黒はなずなの部屋を訪ねていた。
事前に伝えていたため、すぐにドアが開く。
「伏黒くん、どうしたの……?」
「鬼切、返そうと思って」
結局警官に送ってもらった後、ホテルの受付で持ってるのもいらぬ誤解を招きそうだったので、この時間までずっと伏黒が隠していたのだ。
ここには呪霊の気配は感じられないが、夜は呪霊も活発になるし、いつ出現するか分からない。
影の中から鬼切を出して手渡すとなずなは少しモジモジとしながら受け取った。
「あ、ごめんね、ずっと持たせてて……ありがとう」
「あと、少し話せるか?」
「うん、大丈夫。えっと、こんなところじゃなんだよね、中入って?」
ドアを大きく開いて隅に寄り、中へ通そうとする彼女に伏黒はピシリと固まる。
ちょっと待て。
こんな夜中に男を自分の部屋に入れるなんて警戒心無さすぎじゃないか?
俺達は……その、恋人同士というヤツなのだから、夜に部屋で2人きりになるというのはそういうことを……
……いや、絶対そんな意図はないはずだ。
本当にそのつもりならこんな平静を保ってられないだろ、普通。
「あのな、男を簡単に部屋に入れるな。それもこんな時間に……いろいろ期待しちまうだろうが」
「……へっ!?あ、のっ……わ、私、そんなつもりじゃなくて……!」
伏黒が若干照れながら咎めると、なずなにも意図が伝わったのか、みるみる顔を赤くして慌てて開いたドアを狭めた。
その姿に安心したような、少し寂しいような感覚を覚えつつ、彼女に提案する。
「ラウンジで話そう」
「う、うんっ……あの、虎杖くんは大丈夫?」
「今、風呂入ってる」
この話は虎杖にはあまり聞かれたくなかったので、飲み物を買ってくると言って抜け出してきていた。