第6章 真昼の逃避行
「俺なりの優しさだ。今なら半殺しで済む。答えろ伏黒、どんな女がタイプだ?」
「なんだこれ、大喜利かよ」
半殺しと言う東堂は質問内容にそぐわぬ真剣な様子だ。
マジで何なんだ。
「……あれ、夏服か?ムカつくけどいいなぁ」
釘崎は禪院先輩のノースリーブの制服を眺めて暢気なものだ。渡辺はなにやら黙り込んで難しい顔をしている。
2人とも丸腰だ。
揉め事は避けたい。
『人を許せないのは悪いことじゃないよ。それも恵も優しさでしょう?』
姉の津美紀の言葉が浮かぶ。
「……別に、好みとかありませんよ。その人に揺るがない人間性があれば、それ以上は何も求めません」
……揺るがない人間性。
私にあるのかな。
いや、真希先輩のようなスタイル抜群な人って言われるよりはまだなんとかなりそうな気がする。
でも、揺るがない人間性がある人ってやっぱり真希先輩とか野薔薇ちゃんみたいに芯のある人なんじゃないかな。
だったら、ますます望み薄……
いやいや、どうしてこんな必死になってるの?
グルグルと考え悩むなずなをよそに野薔薇は満足げだ。
「悪くない答えね。巨乳好きとか抜かしたら、私が殺してたわ」
「うるせぇ」
「やっぱりだ……」
東堂が小さく呟く。その目にははらはらと涙が流れていた。
「退屈だよ、伏黒……」
構えから一足飛びに距離を詰め、伏黒を殴り飛ばした。
「伏黒くん!?」
なずながとっさに吹っ飛ばされた伏黒の方へ走り出す。
パンッ
「え……?」
乾いた炸裂音とほぼ同時になずなの脇腹に衝撃がきた。
完全に不意をつかれ、衝撃を受け流しきれずに倒れる。