第21章 ネクストステージ
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「夜蛾、アレは何だ」
牢の向こうで呪符の手枷を掛けられた夜蛾に楽巌寺が問いかける。
「人工的な呪骸は他の操術より自立して行動することが可能だ。だが動力である呪力は術師から与えられたものを消費する」
楽巌寺が言っているのはパンダのことだ。
夜蛾が製作した呪骸の中でひときわ異彩を放つパンダは他の呪骸とは明らかに違う特性がある。
「アレの呪力はアレのもので自己補完もできている。上は今、貴様を特級に認定し、無期限拘束を正式に下そうとしている」
特級は呪術師の中でも斜めに外れた等級。
優秀さの証というより、危険人物・要注意人物という意味合いが強い。
なぜ上層部がそんな等級を認定しようとしているのか。
「貴様がもしアレを意図的に造ったのであれば、容易に軍隊を所持できるわけだからの。答えろ、夜蛾」
「貴様は本当にアレの造り方を知らんのだな」
「……はい」
夜蛾は楽巌寺の方を見ずに、牢の壁を眺めている。
脳裏に思い起こしているのは、残される呪骸達のこと。
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