第6章 真昼の逃避行
「……なんで初対面のアンタと女の趣味を話さないといけないんですか?」
「そうよ。ムッツリにはハードル高いわよ」
「オマエは黙ってろ。ただでさえ意味分からない状況が余計ややこしくなる」
茶化した野薔薇を止める。
ふざけているとしか思えないが、相当鍛え上げられた体つきをしている。矛先を野薔薇達に向けさせたくなかった。
「京都3年、東堂 葵!自己紹介終わり。これでお友達だな。早く答えろ、男でもいいぞ」
東堂 葵、その名はなずなも知っている。
昨年起きた呪詛師 夏油による未曾有の呪術テロ・新宿京都百鬼夜行。
京都に出た一級呪霊5体、特級呪霊1体を1人で祓った術師の名前だ。
なおも東堂は聞いてもいない持論を披露している。
「性癖にはソイツの全てが反映される。女の趣味がつまらん奴は、ソイツ自身もつまらん」
「俺はつまらん男が大嫌いだ。交流会は血湧き肉躍る俺の魂の独壇場。最後の交流会で退屈なんかさせられたら、何しでかすか分からんからな」
「……ねぇ、呪術高専って4年制でしょ?」
3年生ならあと1年あるんじゃないかと伏黒に耳打ちする。
「交流会は3年までなんだよ」
伏黒の返答に野薔薇も納得した。
なずなはというと、話の続きを待っていた。
伏黒くんの、好みのタイプ。
なんて答えるんだろう?
……あれ、なんでこんなに気になるのかな。
心にわずかばかり引っかかりを覚える。