第21章 ネクストステージ
「儀式が終わるまでどれくらいかかりますか?」
「回游次第だが、2ヶ月もあれば済むだろう」
羂索によって死滅回游に強制参加させられた者達には明確に時間制限が設けられているのだから。
1、泳者は術式覚醒後、19日以内に任意の結界(コロニー)にて死滅回遊への参加を宣誓しなければならない。
「……今、11月9日の午前9時だ」
「泳者の術師が覚醒したのは10月31日24時頃……」
真希と乙骨の言葉に伏黒が唇を噛む。
「津美紀が回游に参加するまでの猶予は、ざっと10日と15時間」
もしそれまでに参加を宣誓しなかった場合、総則2が適用される。
2、前項に違反した泳者からは術式を剥奪する。
「天元様はさっき参加を拒否すれば死ぬと言ってましたよね」
「ああ」
天元は死滅回游の終了条件の推察を語った時、泳者が全員死ぬか、泳者が全員参加を拒否して死ぬか、そのどちらかが達成されないと終了しないと確かに言っていた。
首肯した天元を見て、真希はここに来る前に死滅回游のルールについて調べた時のことを思い出す。
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高専の医務室、真希は伏黒となずなが乙骨と虎杖を探している間に死滅回游の総則の中にある言葉の定義について聞くため、家入を訪ねていた。
総則2と8にある“術式の剥奪”だ。
呪術師の術式は生まれた時から肉体に刻まれている。
術式を持たずに生まれた者はどんなに努力しても術式は刻まれず、使えないというのが常識だ。
ではその逆である剥奪はどのように行われるのか、いやそもそもそんなことができるのか、多くの術師を診てきた家入なら何か分かるかもしれないと考えた。
「術式の剥奪かぁ……後追いで参加する術師にも適用されるルールだろ?」
真希から一通り総則について聞いた家入は椅子に背中を預け、視線を上にやりながら考察する。
「だとしたら剥奪は“無為転変”で行われるわけじゃないと思う。“使用禁止”ではなく“剥奪”だから“縛り”でもない。となると脳に無理やりなにかしら作用するわけだから……」
家入はほわんとタバコの煙をリング状に吐いて続けた。
「ルール的にも剥奪されると死ぬと思うよ。じゃなきゃ皆参加拒否するだろうし」