第6章 真昼の逃避行
入口の方を見ると、筋骨隆々とした男性とすらりと背の高い女性。
どちらも高専の制服を着ているが、野薔薇もなずなも初めて見る顔だ。
「禪院先輩、なんでこっち来てるんですか?」
伏黒が女子生徒の方に声をかける。
……ん、禪院?
聞き覚えがあるどころではない名前になずなも驚いた。
「あ、やっぱり?真希さんと雰囲気近いわよね。姉妹?」
言われてみると真希と顔立ちや背格好が似ている。
伏黒が言うには双子の姉妹らしい。
「やだな、伏黒君。それじゃあ真希と区別がつかないわ。真依って呼んで?」
「コイツらが乙骨と3年の代打ね」
「アナタ達が心配で学長について来ちゃった。同級生が死んだんでしょう、辛かった?それともそうでもなかった?」
真依の棘のある言い方に3人は眉をひそめた。
「何が言いたいんですか?」
「いいのよ、言いづらいことってあるわよね。代わりに言ってあげる……器なんて聞こえはいいけど、要は半分呪いの化け物でしょう?そんな汚らわしい人外が隣で不躾に呪術師を名乗って、虫唾が走ってしたのよね……死んで清々したんじゃない?」
虎杖くんが、化け物?人外?
違う、彼は人間だ。
この人はいきなりなんてことを言い出すの。
なずなが隣を見ると、伏黒も野薔薇も来訪者達を冷ややかな目で見ている。
「真依、どうでもいい話を広げるな」
今度は男子生徒の方がゆっくりとこちらに歩いてきた。
「俺はただ、コイツらが乙骨の代わりたり得るのか、それが知りたい」
ゆらりと闘気が感じられる。戦う気か。
「……伏黒、とかいったか?」
「どんな女がタイプだ?」
……は?
あまりに突拍子もない質問に、尋ねられた伏黒をはじめ、野薔薇もなずなも首を傾げる。
「返答次第では、今ここで半殺しにして、乙骨、最低でも3年は交流会に引っ張り出す」
東堂はTシャツを破り捨て、凶悪な顔で言い放った。
「ちなみに俺は、タッパとケツがデカい女がタイプです!」