第21章 ネクストステージ
「君は初対面じゃないだろう、九十九 由基」
「……何故薨星宮を閉じた?」
「羂索(けんじゃく)に君が同調していることを警戒した。私には人の心までは分からないのでね」
「羂索?」
「かつて加茂憲倫、今は夏油傑の肉体に宿っている術師だ」
「慈悲の羂、救済の索か……皮肉にもなっていないね」
やはり天元は黒幕の術師を知っていた。
九十九が更に踏み込もうとしたところで、虎杖が横から割り込む。
「天元様はなんでそんな感じなの?」
誰もが気になっていて、しかしできなかった場違いな質問に天元は気を悪くするでもなく、4つある目を細めて笑顔で答えた。
「私は不死であって不老ではないからね、君も500年老いればこうなるよ」
「マジでか」
「12年前、星漿体との同化に失敗してから老化は加速し、私の個としての自我は消え、天地そのものが私の自我となったんだ」
その返答の意味を正確に捉えかねる虎杖達とは対照的に九十九は合点がいった。
「通りで“声”が増えないわけだ」
あの時、星漿体がもう1人いたわけじゃなかったのか……
殊更に時間が惜しい伏黒がすみません、と手を挙げ、乙骨が続けた。
「僕達はその羂索の目的と獄門疆の解き方を聞きに来ました。知っていることを話してもらえませんか?」
「勿論……と言いたいところだが、1つ条件を出させてもらう」
天元は人差し指を立て、意外なことを要求した。
「乙骨 憂太、九十九 由基、呪胎九相図、3人の内2人はここに残り、私の護衛をしてもらう」
「護衛……?不死なんですよね?」
「封印とかを危惧してるんですか?」
乙骨と真希が尋ねる中、九十九が声を上げる。
「フェアじゃないなぁ、護衛の期間も理由も明かさないのか?」
「……では羂索について語ろうか。あの子の目的は日本全土を対象とした人類への進化の強制だ」
「それは九十九さんから聞きました。でも具体的に何をするつもりなんでしょうか?」
「羂索は何故あの時、天元様の結界を利用し“無為転変”で日本の人間を全員術師にしなかったんですか?」
なずなと伏黒の問いかけに天元は答える。
「それをやるには単純に呪力不足だ。うずまきで精製した呪力は術師に還元できない、術式で一人ひとり進化を促すのはあまりに効率が悪い」