第21章 ネクストステージ
―人を助けろ―
祖父の倭助の言葉は今でも虎杖の心の中にある。
虎杖は意を決して乙骨に向き直った。
「……乙骨先輩、宿儺が伏黒で何か企んでる」
宿儺はやってもらわなければならないことがあると気絶した伏黒に言っていた。
無償で傷を治していたし、絶対に何かある。
「渋谷でアイツに肉体を乗っ取られたのは、多分一度に指を10本も食わされたからだ。俺の中に今指は15本、残り5本全部一度に食わされても肉体は乗っ取られないと思う。それでも……」
宿儺が表出する何らかの手段を持っているとすると危険であることに変わりない。
仲間や関係ない人々を手に掛けるくらいなら死んだ方がマシだ。
「もし次、俺が宿儺と代わったら、迷わず殺してくれ。先輩ならできると思う」
「……分かった。死力を尽くすよ」
それを聞いて動揺したのはなずなだった。
「……ど、どういうこと?なんで伏黒くんを狙って……?」
「分かんねぇ、でもロクでもないことだけは確かだ」
「で、でもそれじゃあ虎杖くんが……」
「次、宿儺があんな風に人を殺すことがあったら、俺は堪えられねぇ。だからそうなる前に止めてほしいんだ」
確実に止められる方法……
今のところ分かっているのは虎杖を殺すことだけだ。
「渡辺も宿儺が出てきたら伏黒連れて全力で逃げろ」
宿儺の目的は不明だが、どこかの時点で動く可能性があるのなら、その対応策は持っておくべきだ。
不安げに瞳を揺らすなずなにもその意図は伝わり、小さく首肯した。