第21章 ネクストステージ
絞り出された悲痛な声を向かいで聞いていた乙骨は先程の虎杖との戦闘を思い出す。
―まだ死ぬわけにはいかねぇんだわ―
ああは言っても虎杖君は迷っているんだろうな。
自分が本当に存在していのかどうか、
だから僕との戦闘で最後までボルテージが上がらなかった。
―誰かに必要とされたい。生きてていいって自信が欲しいんだ―
かつて乙骨は自身が呪ってしまった里香を制御できず、周囲の人を傷つけていた。
乙骨を守ろうとして周囲を傷つける里香を見続け、「自分がいなくなってしまえば周りは傷つかずに済むんじゃないか」と悩み、自殺まで考えた。
スケールは違えど今の虎杖の心境は理解できる。
「俺は人を殺した!俺のせいで大勢死んだんだぞ!!」
「俺達のせいだ」
伏黒の眉間の皺が深くなる。
「オマエ独りで勝手に諦めるな」
「そ、そうだよ。私達も先輩達も虎杖くんが悪いなんて思ってないよ」
虎杖が宿儺の指を飲まなかったら、伏黒は杉沢第三高校で呪霊に殺されていたし、なずなも虎杖が呪霊を足止めしなかったら英集少年院に閉じ込められ、出られずに死んでいたかもしれない。
本来なら宿儺の指を飲み込んだ時点で死刑になるはずの虎杖を助命したいと望んだ伏黒、そして助命された虎杖に救われたなずな。
今回の件の責任を虎杖だけに背負わせるなど、2人にはどうしてもできなかった。
伏黒はフーッと息を吐き、頭を掻く。
「俺達はヒーローじゃない、呪術師だ。俺達を本当の意味で裁ける人間はいない。だからこそ俺達は存在意義を示し続けなきゃならない。もう俺達に自分のことを考えてる暇はねぇんだ」
―あらゆる仲間、俺達全員で呪術師なんだ―
虎杖は渋谷で心折れかけていた時の東堂の言葉を思い出す。
でもやはり高専に戻るという決断は難しかった。
「ただひたすらに人を助けるんだ。これはそもそもオマエの行動原理だったはずだ」
苦渋の表情を浮かべる虎杖に伏黒が畳みかける。
「まずは俺を助けろ」
「!」
「渋谷事変の黒幕の術師が“死滅回游”っていう殺し合いを始めたの。マーキングされた人達が強制的に参加させられて、殺し合う儀式……」
「その死滅回游に津美紀も巻き込まれてる。頼む虎杖、オマエの力が必要だ」