第6章 真昼の逃避行
交流会に向けて1年生を鍛え始め、各人の弱点や伸ばすべきところは分かってきた。
時間はあまりないが、効率的にやればなんとか間に合うだろう。
さて今日の訓練内容は、と考えていると、後ろからパンダが聞いてくる。
「あれ、1年ズは?」
「パシった」
キョロキョロと探しているパンダに真希が短く答えた。
「大丈夫か?」
「3歳児じゃねぇんだ。おつかいくらいできんだろ」
「いや、そうじゃなくて……今日、京都の学長が交流会の打ち合わせで来るだろ?」
「ツナ……」
真希もパンダの続きの言葉を待つ。
「特級案件に1年派遣の異常事態。悟とバチバチの上層部が仕組んだって話じゃん?京都の学長なんて、モロその上層部だろ。鉢合わせでもしたらさー」
「ターゲットだった虎杖は死んでんだ。今更恵達をどうこうするつもりもないだろ。京都のジジイだって、表立って騒ぎは起こさねぇって」
「しゃけ」
「教員は立場があるけど、生徒はそうでもないよな?」
真希が立ち止まって振り向く。
「……真依が、来てるって言うのか?」
「憶測だよ。打ち合わせに生徒は関係ないからな……でもなぁ、東堂と真依、アイツら嫌がらせ大好きじゃん」
「自販機、もうちょっと増やしてくれないかしら?」
野薔薇が飲み物を選びながら文句を言う。
しかし、場所が場所だけに難しいだろう。
入れる業者がまず限られてくる。
そして買う側の人間もそう多くないので採算の問題もある。
「なずなももっといろいろほしいでしょ?」
ミネラルウォーターのボタンを押して自販機から取り出していると、野薔薇に迫られた。
「え?……私は最低限水とお茶があれば大丈夫かな」
「仙人かよ!」
そんなことを言い合っていると、ふと人の気配がした。