第21章 ネクストステージ
「僕も一度、身に余る大きな力を背負ったんだ。でも、背負わされたと思っていた力は僕自身が招いたモノだった……君とは違う、君の背負った力は君の力じゃない」
そして虎杖の目を真っ直ぐ見据える。
「君は悪くない」
「……違うんだ。俺のせいとかそういう問題じゃなくて、俺は人を……」
「虎杖」
「虎杖くん……!」
そこで聞き慣れた声に遮られた。
振り向くと伏黒となずなが足早にこちらに向かってきていた。
乙骨から連絡を受けた場所には虎杖が座っていた。
気絶していると聞いていたが、目を覚ましたらしい。
伏黒となずなは思わず小走りになっていた。
「伏黒、渡辺……」
こちらを振り向いた虎杖は眉を寄せ、普段の笑顔は消えており、精神的に消耗しているのが見て取れる。
それに渋谷での任務前にはなかった傷も増えていた。
「無事でよかった。その怪我は大丈夫?」
虎杖の眉間と口元についた傷をなずなが心配そうに覗き込むが、もう傷痕といっても差し障りないほど治っている。
虎杖も大丈夫だと小さく頷いたので、なずなはホッと安堵した。
「さっさと高専に戻るぞ」
今度は伏黒が口を開いた。
「今高専の結界は緩んでる。直接顔を見られない限り、オマエが戻っても問題ねぇ。一度先輩らと合流して……」
「やめろ」
だが虎杖は遮ってしまう。
あれほどのことがあったにも関わらず、いつも通りの態度の2人に居た堪れなさが込み上げてくる。
「当たり前のように受け入れるな。無かったことににするんじゃねぇ」
渋谷で宿儺が行ったあの虐殺を。
先輩達や避難していた一般人を特級呪霊との戦闘に巻き込んで、渋谷の一帯を更地にした。
それは自分がいなければ起こらなかった事態だ。
決して許されない、許してはならないことのはずだ。