第21章 ネクストステージ
その出来事から約1ヶ月、出張から帰ってきたら渋谷は混沌の海、しかも宿儺が現れて大勢の一般人を巻き込んで街を破壊したと聞いた。
総監部にとってまたとない口実になる。
「他に執行人を立てられたり、虎杖君の情報を断たれるよりは、こう立ち回るのがベストだと判断した」
ただ、一度も会ったことがないといっても虎杖は乙骨の後輩だ。
口で言っただけでは信用されない。
「あっちも馬鹿じゃないから、総監部とは執行人として認めてもらう代わりに虎杖君を“殺す”っていう縛りを結んだんだ」
「だから一度殺した、本当にごめんね」
申し訳なさそうに右手を顔の前に持ってくる乙骨だが、虎杖の方はまだ話を飲み込みきれていない。
「いや、じゃあなんで俺は生きてんだ?」
「反転術式だよ。君の心臓を止まると同時に反転術式で一気に治癒した。以前の君の話を聞いていたからいけると思って……僕が正のエネルギーをそのままアウトプットできることを知ってる人は少ないしね」
以前の自分の話……
そう聞いて虎杖が思い出すのは少年院での任務だ。
伏黒達を特級呪霊の領域から逃がすために宿儺と代わり、肉体の主導権を一時的に奪われた時、心臓を抜かれてその後蘇生した。
「そう、君の死を偽装するのはこれで二度目だ。すぐにバレるかもしれないけど、状況が状況だしね、虎杖君の死刑はとりあえずは執行済みで処理されるはずだ」
「……どうして、そこまでして……」
自分を助けてくれた?
死刑を執行しなかったとなれば、執行人を買って出た乙骨にも危険が及びそうなのに。
顔も見たことのない後輩をそこまでして助けるのか?
しかし、その問いかけには即答が返ってきた。
「僕が大切にしている人達が君を大切にしているからだよ」
迷いない言葉。
会ったことはなくとも、乙骨は同輩や後輩から虎杖の話をよく聞いていた。
話を聞く中で、彼が皆に大切にされていることも。