第21章 ネクストステージ
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乙骨が海外出張に出ていた時―
自身も忙しいはずの五条が渡ってきた。
そしてある頼み事をされたのだ。
「ちょーっと嫌な予感がしてさ、僕になんかあったら、今の1、2年のことを憂太に頼みたくて」
軽い調子で言っているが、呪術師最強であるこの教師に“何かあったら”なんて状況はすぐに思いつかないし、おそらく頭を捻っても出てこない。
「何かって……女性関係ですか?」
「……憂太も冗談言うようになったんだね」
「いや、五条先生に“何か”って想像つかなくて」
ここはケニアの都市、街のすぐ外にはサバンナが広がっている。
そんな日本では見ることのできない景色を眺めながら2人は歩いていく。
「特に1年の虎杖悠仁、あの子は憂太と同じで一度秘匿死刑が決まった身だ。注意を払ってもらえると助かる」
停学中の3年生も上層部に睨まれているが、彼らは自分達でなんとかできそうなので大丈夫だと付け加えられた。
今年6月に編入したという1年生……
その頃から既に海外に出ていた乙骨はまだ会ったことがない。
だが、乙骨の答えは決まっていた。
「……ミゲルは?」
一通り話し終えた五条が周りを見て尋ねる。
ミゲルとは乙骨がこのケニアで行動を共にしている術師であり、昨年の百鬼夜行の際には五条を足止めした指折りの実力者。
百鬼夜行後、五条が勝手に友人だと主張し、乙骨を預けたのだ。
ちなみにミゲル自身は百鬼夜行で五条に一方的にやられたので、苦手意識を持っている。
今回もほんの少し前まで乙骨はミゲルと昼食をとっていたが、彼は五条を見るなり驚愕し、いつの間にか姿を消していた。
「先生には会いたくないそうです」
「……」
五条は少しつまらなそうに口を尖らせていた。
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