第21章 ネクストステージ
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「……じん、……おい、仁」
「何ですか、父さん。彼女の話をするなら帰りますよ」
仁は倭助の言葉もまともに聞かず、おくるみに包まれた赤子をそれはそれは大切に抱いている。
息子を見守るその眼差しは愛しくてたまらないと語っているようだった。
「仁、オマエがどう生きようとオマエの勝手だ。だが、あの女だけはやめとけ。死ぬぞ」
「悠仁の前で変な話はやめてください。案外覚えているそうですよ、赤ん坊の記憶」
高い高いをしてやるが悠仁はよく分かっていないらしい。
耳を傾けようとしない仁に倭助は眉を寄せて構わず言葉を続ける。
「オマエが子供を欲しがっていたことも、香織との間にそれが叶わなかったことも知ってる。だが香織が死んだのは……」
「お義父さん、何の話ですか?」
話に割り込んできた女性。
彼女の額にはその美貌に似つかわしくない異様な縫い目が……
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そこで虎杖はハッと目を覚ました。
右手に明かりが見えて起き上がると、掛けられていた制服の上着が滑り落ちる。
頭があった所には枕のように服が畳んで置いてあり、介抱されていたようだ。
視線を上げると焚き火を挟んで向かい側に乙骨が座っていた。
焚き火に目を落としていた乙骨が気づき、目が合う。
「……あれ?俺……」
「よ、よかった〜」
纏わりつくような重い殺気はどこへやら、乙骨は目尻に涙を浮かべてへなへなと相合を崩した。
「??」
虎杖は何が何だかさっぱり分からない。
「9月頃かな、五条先生がわざわざ会いに来てね、君のことを頼まれたんだ。それでやむを得ず芝居を打たせてもらった」
「芝居……?」