第21章 ネクストステージ
直毘人の遺言を聞いた後、真希は検査があるということで病院に残り、伏黒となずなは九十九に呼び出されて高専に戻ろうとしていた。
その道中も乙骨に連絡できないかと何度も電話をかけるが不通のまま。
虎杖も見つけられず、連絡もつかずで時間ばかりが過ぎていく。
東京中に溢れた呪霊に突如始まった殺し合い……何も分かっていないに等しいこの状況で焦りは禁物だと理解はしているが、仲間の命が危険に晒され、しかも手を下そうとしているのは自分達の先輩だ。
説得に手が届きそうなだけに早くと思わずにはいられなかった。
2人が高専に到着し、九十九のいる地下室に入ったまさにその時、伏黒のスマホに乙骨から着信が入った。
「乙骨先輩っ!」
『ごめんね、何度も電話くれてたのに出られなくて』
目を丸くしている九十九に断る余裕もなく、なずなも乙骨の声を拾おうと耳を寄せる。
「総監部からの通達で虎杖の死刑執行人に乙骨先輩が任命されたって聞きました。そのことで相談があって、虎杖の……」
『ああ、それならもう終わったよ』
「!?」
乙骨の言葉に愕然とした伏黒となずなは互いに目を見合わせる。
間に合わなかった……!
『さっき総監部にもそう伝えてもらった。多分すぐに正式な完了通達があるんじゃないかな』
淡々と話す乙骨とは対照的に伏黒もなずなも何も言葉が出なかった。
2人のリアクションから何があったか察した九十九も額に手を当て天井を仰いだ。
「遅かったかぁ!……まぁ、過ぎたことは仕方ない、このまま乙骨君に繋いどいて。殺し合いについて分かったことがいくつかあるんだ」
『伏黒君、電話口に誰かいるの?』
これにはスピーカーフォンに切り替えてすぐ九十九が答える。
「私は九十九 由基、君と同じ特級術師だ。今は伏黒君達と協力して夏油が仕組んだ殺し合いについて調査してる。暫定的ではあるが、その殺し合いについて分かったことを共有しようと思ってね」