第21章 ネクストステージ
脹相の出血量は人間であればとっくに失血で死んでいてもおかしくないレベルに達していた。
だが脹相は呪霊と人間の混血、呪力を血液に変換できる特異体質故に呪力が枯渇しない限り失血死することもない。
相手の時間稼ぎに乗じてこの量の血を確保できるのを待っていた。
大量の血液が波打ち、大きく畝って直哉に向かってくる。
どーいうこっちゃ!?
なんでこの出血で生きとんねん。
瞠目して後退する直哉は目の前に迫る血の川に気を取られて脹相を見失ってしまう。
ヤバイ!
距離を取らされた上に大量の血で奴を見失った。
血の波の向こうから“苅祓”が飛んでくるが、これは容易に捉え、身を屈めて避ける。
トロい攻撃や、
やっぱ出血で死にかけなんやろ。
それはほんの少しの油断だった。
直哉の左手、柱の向こうから手を合わせた脹相が。
視認した直後に発射された穿血は避けきれたが、血の川に追い込まれる。
この血を被るわけにはいかん!
だが、そちらに意識を割きすぎた。
前から来た脹相に蹴り飛ばされ、血が袴にかかる。
ズシリと一気に脚が重くなった。
袴に滲みた血を固定されたのだ。
「後は分かるな」
直哉の正面に立ちはだかった脹相。
合わせた手の中には凝縮された血がある。
「詰みだ」
「どうやろな」
直哉の術式は事前に24fpsで作った動きをトレースする。
この程度の重さの足止めであれば問題なく動ける。
「試してみぃや」
直哉が術式を発動して走り出したが、脹相は動かない。
驚愕する直哉はもう止まれない。
なんで撃ってこぉへんのや……!
自分に向かって真っ直ぐ飛んでくるであろう穿血を避けるように動きを作った。
だがその穿血が来ない。