• テキストサイズ

妖刀使いの臆病呪術師【呪術廻戦】

第21章 ネクストステージ



「用意がいいな」

「内緒やで、ぶっちゃけダサいと思っとんねん、術師が得物持ち歩くの。それがないと勝たれへんってことやし。意外とおんねんで、同じ考えのやつ」


これは昔からずっと変わらず直哉が思っていたことだ。
禪院家にも得物を持った術師は山程いるが、その誰もが自分より格下。

そして、直哉がこれまで見てきた強者は得物などなくとも圧倒的なまでに強者だった。


「俺の兄さん方もブラブラとみっともないねん。よぉアレで甚爾君のことやいやい言えたもんや」


幼い頃、甚爾を初めて見た時の衝撃は今でも忘れようがない。
呪力を全く持たないと聞き、どんな惨めな顔をしているか、面白半分で見に行った時のことだ。


駆けた先にいたのは怪物のような男だった。

目が合ったわけでもないのに身が竦んだ。
そしてその圧倒的な強さに心が震えた。



「嫌いなんだな、兄弟が」

「嫌いやね、弟よりデキの悪い兄なんかおる意味ないやろ。首括って死んだらええねん」

「その兄弟達のお陰で今のオマエがあるのかもしれんぞ」

「は?今、めっちゃキショいこと言うた?ドン引きやわ」

「出来が良かろうと悪かろうと兄は弟の手本なんだ。兄が道を誤ったのなら、弟はその道を避ければいい。兄が正道を歩んだのなら、弟は後をついてくればいい」


直哉の兄弟に対する感情は脹相には到底理解できなかった。


「オマエが強いのはオマエの兄が弱いお陰だったらどうする?」


兄が先を行ったことで強くなる近道を歩けたのならば。


「何故俺がしぶといのか聞いたな。教えてやる、俺には手本がない。何度も何度も間違える」


血が止まらない、いや、敢えて止めない脹相の足元に血溜まりが広がっていく。


「それでも弟の前を歩き続けなければならん」


常に弟達の先を行き、正解の分からない、あるいは正解のない道を歩く。
後についてくる弟達の道標となるために。

途中で立ち止まること、倒れることは許されない。
そんなことをしたら大切な弟達が迷ってしまうから。


「だから俺は強いんだ」



/ 1091ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp