第21章 ネクストステージ
陸橋の下で脹相は直哉に圧倒されていた。
反応できない速度で動かれ、なす術もなく柱に叩きつけられる。
速い!
術式の種がまるで分からん!!
ここまで圧倒されれば、あちらから開示することもないだろう。
“百斂”どころの話ではない。
体外の血液操作がまるで機能しない!
「しぶと、マジで何なん、君」
「兄さ、10人兄弟のな」
赤鱗躍動・載
脹相の顔にある模様が広がっていく。
「答えになってへんねん。俺は術式とそのしぶとさのことを聞いてんねん」
言うや否や直哉が追撃に動く。
が、今度は脹相の目がそれを追っていた。
背後に回った直哉に脹相の掌底が迫る。
“赤鱗躍動”か、
その能力を外眼筋に集中させて動体視力を上げとるんや!
だがその掌底は空を切り、脹相の鳩尾に直哉の拳がめり込んだ。
「残念、こっちはカウンター前提で動き作っとんのや」
直哉の術式は直毘人と同じ投射呪法。
加えて脹相の赤血操術についてもその術式効果を知っている。
投射呪法より速い穿血はその前段階の百斂をさせないようにし、こちらの動きに対応し得る赤鱗躍動も対策済みだ。
以前として直哉の優位は揺らがない。
「クソ!」
壁に叩きつけられた脹相の脇腹から血が流れ出した。
「!!」
いつの間に斬られた!?
「君、しつこいから使わせてもろたで」
そう言った直哉の手には血に濡れた小刀が。
「赤血操術やし、止血はお手のもんやろ。止血に気ぃ回しながらどこまで俺とやれるか試してみよか」
赤血操術で操ってくることも考慮して、一滴も残さず血を払い、小刀を仕舞う。