第21章 ネクストステージ
「脹相こそいいのか?」
「俺は、オマエの弟も殺したんだぞ」
八十八橋で確かに殺した。
当初、脹相もそのことで虎杖に怒りをぶつけ、向かってきたはずなのに。
「いい、アレは事故だ。壊相も血塗も俺の立場なら同じようにしたはずだ……赦す、赦さないじゃない。兄弟とはそういうものだ」
脹相は自身の術式の影響で、血の繋がった弟達の異変はどんなに遠くにいようと感じ取れる。
“死”
それは生物にとって最期にして最大の異変。
虎杖との戦闘時、脹相は目の前で虎杖悠仁の“死”を強烈に感じた。
それは間違いなく、虎杖が脹相の弟であるということ。
そして兄である脹相は弟を守るために行動する。
脹相は呪霊の父と人間の母を持つ。
だがもう1人、その間に血を混ぜた者がいた。
それが加茂憲倫、今は夏油の姿をしている母を弄んだ憎むべき相手。
例え150年も歳が離れていようとも、加茂憲倫が身体を転々として生き永らえているならば、おかしな話ではない。
虎杖は加茂憲倫……今は夏油の中にいる術師の血縁なのだ。
虎杖は腰を上げて外へ足を向ける。
「……行こう。今はとにかく呪霊を減らさないと」
2人の狩人が動き出していることを彼らはまだ知らない。