第21章 ネクストステージ
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少し時を遡る。
夏油が放った呪霊、その中でもこちらに襲いかかってきたものを祓った九十九は渋谷の街を眺めていた。
「すまない、あの時迷った」
「ここまで事態が進んでしまったのであれば、一度泳がせて様子を見るべきなのではと」
そう謝ってこちらを振り向く。
「気づいたかな、私は君達の味方というわけではないんだ。ただ世界から呪霊をなくしたいだけのしがない美女さ」
「お詫びと言ってはなんだか、あの場にいた子達は私と私の仲間が責任を持って送り届けるよ。私もいい加減天元と向き合わないとね」
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―君はどうする?―
無人の施設の階段に座り込み、項垂れた虎杖は九十九の言葉を思い出していた。
そこへ脹相がやってくる。
「悠仁、怪我の具合はどうだ?」
渋谷駅で戦った時とはまるで違う心配そうな声色。
正反対になった態度に思うところはあったが、自分を心配してのことだというのは分かる。
「黒閃を食らったとこ以外はまぁ大丈夫。多分宿儺の影響だ。アイツの力が大きくなってるのを感じる」
「悠仁、俺に気を遣うな。高専に戻っていいんだぞ、俺も焼相達の亡骸を回収したいしな」
「つかってねぇよ。俺が戻りたいかどうかの問題じゃねぇんだ」
夏油が行方をくらませた後、虎杖は渋谷に残り、何かに取り憑かれたように呪霊を祓っていた。
脹相はずっとその傍についていたのだ。
「宿儺が伏黒を使って何か企んでる」
渋谷で宿儺が取った行動。
やってもらわなければならないことがあると言って、伏黒の傷を治した。
宿儺が伏黒にさせたいことなんて絶対に碌なことではない。
「それに俺は人をいっぱい殺した」
―自分が助けた人間が、将来人を殺したらどうする―
「俺はもう皆と一緒にはいられない」
伏黒が危惧していたことをよりにもよって自分がしてしまった。
もう自分は高専にいていい人間じゃない。