第21章 ネクストステージ
「禪院家当主に俺が!?」
病院の一角で真希からそう伝えられた伏黒はにわかに信じられずにいた。
傍らにいるなずなは驚きのあまり声も出ないといった様子だ。
2人は虎杖と乙骨を捜索していたが見つからず、仮眠のために一度戻ってきており、ほぼ同じタイミングで目覚めた真希は、禪院家の者から直毘人の死去とその遺言の内容を知らされたのだ。
真希もすぐには信じられない内容だったが、自分達に有利に働くと判断してすぐに伏黒を呼び出した。
「ああ、直毘人の遺言だ」
「お断りします。面倒くさい」
「いや、悪いが受けてくれ。直毘人は恵には禪院家の財産を全部譲るって言ったんだ。金に呪具、当主になれば御三家や総監部の情報も入ってくる。これからの私達の立ち回りが大きく変わる」
「じゃあ真希さんがやってくださいよ、譲るんで」
「今の私じゃ誰も納得しねぇし、ついてこねぇよ」
苦い顔をする伏黒に真希は畳みかける。
「相伝の術式を継いでること!領域を会得してること!更に悟に目をかけられてたドラが乗った恵でギリだ!」
それでもなお伏黒は渋る。
「納得とか……禪院家の人がどう思おうが関係なくないですか?さっき言ってた恩恵は当主になりさえすれば受けられるでしょ」
「……まだ私じゃダメなんだよ。私じゃ、真依の居場所を作ってやれない」
悔しげに肩を落とした真希に伏黒は瞠目し、続けようとしていた言葉を飲み込んで頷いた。
「……分かりました」