第21章 ネクストステージ
「俺の兄さん方は皆ポンコツやし、叔父……弟のアンタもパッとせぇへん。その娘は論外。甚壱君はなぁ……顔がアカンわ。甚爾君と逆やったらよかったのにな」
言いたい放題の直哉に甚壱が無言で拳を振り向けた。
その拳を避けた直哉の首にすかさず扇の刀が突きつけられる。
だが3者ともそれ以上は動かず、直哉は両手を上げて形だけの降伏の姿勢を見せた。
「パパが峠を彷徨ってんねんで、堪忍したってや」
ちょうどその時、部屋の戸が開いた。
「皆さんお揃いで」
眼鏡をかけた小柄な中年男が入ってくる。
「たった今、禪院家当主 禪院直毘人様がお亡くなりになりました。ご遺言状はこのフルダテがお預かりいたしております」
フルダテは脇に抱えた大きな蝦蟇口の鞄から折り畳まれた遺言状を取り出した。
「ご遺言状は直毘人様のご遺志によって、禪院扇様、禪院甚壱様、禪院直哉様、3名が揃われた時、私からお伝えすることになっております」
3人それぞれと視線を合わせて確認する。
「相違なければご遺言状を読み上げます」
抗議の声はなく、フルダテは遺言状を広げて読み始めた。
「一つ、禪院家27代目当主を禪院直哉とす。一つ、高専忌庫及び禪院家忌庫に保管されている呪具を含めた全財産を直哉が相続し、禪院扇、禪院甚壱のいずれかの承認を得た上で直哉が運用することとする」
「チッ、まぁええか」
全ての権限が直哉に与えられる訳ではないことに舌打ちするが、遺言はまだ続く。
「ただし、何らかの理由で五条悟が死亡、または意思能力を喪失した場合、伏黒甚爾との誓約状を履行し、伏黒恵を禪院家に迎え、同人を禪院家当主とし、全財産を譲るものとする」
「あ゛?」