第21章 ネクストステージ
しかし、夏油はそれを一笑に付した。
そもそもの目的が違うのだと。
夏油は呪霊のいない世界も、牧歌的な平和も望んではいない。
非術師、術師、呪霊、これらは全て“人間”という“呪力”の形の“可能性”だと。
だが、人間の可能性はまだまだこんなものではない。
脹相のようにそれを自ら生み出そうともしたが、それでは駄目だった。
自分から生まれるモノは自分の可能性の域を出ない。
答えはいつだって混沌の中で黒く輝いているもの。
夏油は自分の手から離れた混沌からその可能性を見出したかった。
そして、取り込んだ真人から抽出した無為転変を発動した。
「もしかして少し前に空に走った呪力って……」
「そう、夏油が呪霊操術の極ノ番・うずまきを使って抽出した無為転変を遠隔発動したんだ」
無為転変で変えたのは2種類の非術師。
虎杖 悠仁のように呪物を取り込ませた者。
吉野 順平のように術式を所持しているが、脳の構造が非術師の者。
それぞれの脳を術師の形に整え、前者は器としての強度を、後者は術式を発揮する仕様を手に入れた。
どちらも夏油が厳選し、既にマーキングしていた者達だ。
そして、呪物達の封印を解き、マーキングの際に夏油の呪力にあてられて寝たきりになった者も目を覚ます。
彼らには呪力への理解を深めるために殺し合いをしてもらう、と。
1000人の虎杖悠仁が悪意を持って放たれたと同義だと言った。
伏黒が息を呑む。
「待っ、てください。それって……!」
正体不明、出自不明の呪いで寝たきりになった津美紀、全国にいる同じような被呪者達。
それが夏油のマーキングによるものだったということは、津美紀がその殺し合いに巻き込まれているということ。