第20章 10月31日 渋谷にて
少女を避難させた乙骨は1人、ろうそくの灯った廊下を進み、その突き当たりにある6つの窓が円形に並んだ空間にいた。
窓の後ろにはそれぞれ呪術総監部の役員がいるが、乙骨からはその姿は見えず、声のみが届く。
「ご苦労、乙骨」
「労う気なんかないんだから。さっさと本題に入りましょう」
ここへ来たのは総監部にある提案をするためだ。
「これで僕があなた達の命令に従うと分かったでしょう」
「ヒッヒッ、呪霊をいくら殺した所で何の証拠にもならんさ」
「じゃあ“縛り”でも何でも結んだらいい」
乙骨の声が一段と低くなり、周囲の温度まで冷えたような錯覚さえ覚える。
「五条先生の教え子とか関係ないですよ。彼は渋谷で狗巻君の腕を落としました」
顔を上げた乙骨の目には冷たく昏い殺気を孕んでいた。
「虎杖悠仁は僕が殺します」
直後、呪術総監部より5つの通達が下される。
一、夏油傑生存の事実を確認、同人に対し再度の死刑を宣告する
二、五条悟を渋谷事変共同正犯とし、呪術界から永久追放。かつ封印を解く行為も罪と決定する
三、夜蛾正道を五条悟と夏油傑を唆し、渋谷事変を起こしたとして死罪を認定する
四、虎杖悠仁の死刑執行猶予を取り消し、速やかな死刑の執行を決定する
五、虎杖悠仁の死刑執行役として、特級術師 乙骨憂太を任命する
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