第20章 10月31日 渋谷にて
同じ頃、東京中で異変が起きていた。
渋谷を中心に23区はほぼ壊滅。
はっきりと無事と断言できるのは、奥多摩の町村、青梅市、あきる野市、八王子市、町田市の一部、各島嶼のみ。
だが、それも「今は」という話。
放たれた呪霊の数は1千万は下らない。
まだ無事な場所も呪霊の群れに飲み込まれるのは時間の問題だった。
更に官房長官を含めた総理代理全員の安否不明。
完全な政治的空白だ。
官邸機能を大阪に移転するにしても、この規模での空白を他国に知られれば、軍事介入もあり得る。
もうこれは呪術界のみでは収拾できない。
都内全域を避難命令区域に設定し、都民の避難が完了次第、立入禁止区域にする。
これだけ大規模に事を運ぶためには、呪霊の存在を公表するのも致し方ない。
ただし、呪霊はあくまで東京のみに発生するものとして公表し、一般人の呪力の漏出を東京へ促す。
なんとしても呪霊の発生は東京に限定したい。
東京は人外魔境へと変貌しつつあった―……