第20章 10月31日 渋谷にて
「驚くのは後にしろ!オマエの術式をもう少し詳しく話せ」
「は、はいっ、呪力を込めた手で触れた場所の状態を固定する術式です。傷に使用すれば治らない代わりに悪化もしません。なので、術式を解除すると同時に治療をしてほしいです」
一目見ただけで危険な状態と判断した家入の鋭い声に新田 新はビシッと姿勢を正して緊張気味に答える。
「これは呪霊の攻撃か?」
「はい、以前情報もらってた魂の形を変えるツギハギ呪霊の術式です」
完全に姿を変えられたわけではないから、まだ助かる可能性はある。
だが、以前七海が倒した改造人間を解剖した時に反転術式だけではどうにもならないことが判明している。
「……ここじゃ設備も薬品も足りない。一緒に病院に来い」
こういった事態に備えて救急車も待機させてある。
少し前に真希達を搬送した病院の手術室を借りて、万全の体制で処置するべきだ。
処置後にすぐ戻ることを夜蛾に伝え、家入は新を連れて野薔薇を乗せた救急車に乗り込み、病院へ急行した。
「……渡辺、大丈夫か?」
真っ青な顔で救急車を見送ったなずなを伏黒が気遣わしげに覗き込む。
なずなは不安そうに瞳を揺らしながら伏黒に視線を移した。
「の、野薔薇ちゃん、大丈夫だよね?助かるよね?」
声が震え、今にも泣きそうになっている彼女に、軽々に大丈夫だとは答えられなかった。
それほどに野薔薇の状態は危険……というより、あの状態で運ばれてきた時点で助からなくてもおかしくないと、医療にそこまで詳しくない伏黒にも思える程だった。
ただ、本当に助かる見込みがないのなら、家入がそう判断しているはずだ。病院に運んで処置するということは、まだ可能性が残っているということ。
「……家入さんも病院スタッフの人達も手を尽くしてくれる。俺達は待つしかできねぇけど……」
「ぅ、ぅん……」