第20章 10月31日 渋谷にて
これより少し前、渋谷では呪霊の術式と思しき隕石が落ちたり、あちこちのビルが爆発・倒壊したり、109一帯が更地になったりと、渋谷は混沌を極めていた。
今はそういった大規模な戦闘は確認できないものの、その静けさは逆に異様に感じられた。
1分1秒が長く感じられ、意味もなく何度も時計を確認してしまう。
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「硝子、来てくれ!」
時間にして15分程が経った頃、入口の方から夜蛾の声が聞こえてきた。
足早にそちらへ向かう家入に伏黒、なずな、新田もついていく。
「……っ!、野薔薇ちゃん!?」
簡易ベッドに寝かされた野薔薇の姿に全員が息を呑んだ。
ピクリともしない。
気絶しているだけなら呼吸で少し動くであろう胸部もだ。
何より……
左目からこめかみ、左側頭部が潰れていた。
どんな攻撃を受けたら、こんな……
立ち尽くすなずな達をよそに家入は野薔薇を運び込んだ者から話を聞いていた。
「今は自分の術式で傷の状態を固定してます。心肺停止からまだそこまで時間は経ってません」
初めて聞く声に顔を上げるとスーツの形をした高専の制服にクロスタイを着けた金髪の少年がいた。
「新(あらた)!?」
「姉ちゃん!?」
どことなく顔つきが新田に似ている……と思ったら、彼女の弟らしい。
彼の方もまさかここに姉がいるとは思っていなかったようで、驚きを見せている。