第20章 10月31日 渋谷にて
「……ぅ……」
重い瞼を上げると目に入るライトの明かりが眩しかった。
さっきとは景色が全然違う。
ここはどこ……?
外にいたはずなのに今は室内のようだ。
視界に入るのは簡素な作りの天井。
こんな場所には来たことがない……と思う。
見覚えのない天井の景色を緩慢に眺めていると、視界の端で何か動いた。
顔をそちらに向けるのも難儀していると、あちらから覗き込むようになずなの視界に入ってきた。
映り込んだ顔に目を見開く。
伏黒くん……!!
助けられなかったと思っていた彼が目の前にいることが信じられず、無意識にガバリと起き上がると、貧血で視界が大きくぐらついた。
まずい、と手を突き出そうとしたが、身体が鉛のように重くて腕が上がらない。
倒れると思いギュッと目をつぶったが、予想していた衝撃は来ず、代わりにあたたかい何かに包み込まれた。
「っ、大丈夫か?大怪我でかなり出血したみたいだから、無理して動くなよ」
気づくと伏黒に抱き込まれる形で身体を支えられていた。
頭上から聞こえる低い声と息遣い、視界に映る紺色の制服。
何より、胸に当たった耳から聞こえる確かな鼓動。
生きてる。
伏黒くん、生きてる……!
生きていることへの嬉しさと助けられなかった申し訳なさ、なぜ生存できたのかという疑問……
なずなの感情はぐちゃぐちゃになって目から涙が溢れてくる。
「良かった……!生きてて本当に良かった、死んじゃったかと思ったから……っ、私、伏黒くんのこと、守れなかった、から……」