第20章 10月31日 渋谷にて
・
・
・
玉犬の元へ急ぐと更地になった場所から1ブロック程離れた車道になずなが倒れていた。
制服は血に濡れ、その小さな身体の下に至るまで夥しい血痕が広がっている。
心配そうになずなの頬を舐めている玉犬の傍らに膝をつき、反応のない彼女を仰向けにする。
腹部の血痕が特に酷い。
「悪い、少し確認するぞ」
一言断って、制服を捲って腹の傷を確認すると、血がこびりついているものの、傷口はもう塞がっている。
血を吐いた跡を拭い、他の傷が無いことを確認しながら、脈も呼吸もあることにホッと肩の力が抜けた。
だが、まだ安心できるとは言えない。
外からは治っているように見えても内部はまだ治りきっていないかもしれないし、出血量も多く、顔色も真っ青を通り越して真っ白、わずかに鬼切を握る手は冷え切っている。
一刻も早く診てもらわなければ。
できることなら鵺に乗せて早く運びたかったが、伏黒も玉犬を呼び出すのが限界。
せめてもと体温を分け与えるように手を重ね、鬼切を離さないように握り込ませる。
そのままなずなを横抱きにして、救護所へ急いだ。